朝はまだプレスは動かさず、まずは仕掛かりの確認から。
昨日までに組み上がった卓上お玉が、黄色いコンテナに整然と並んでいる。
磨きの光がまとまっている様子は、なんだか柿の実を箱に詰めたときにも似ている。
卓上お玉は、派手な製品ではない。
店で料理を支える “縁の下” の道具だ。
それでも、使う人の手に渡ったその先で、毎日何百回もすくい、注がれ、拭かれ、また使われる。
そう考えると、わずかな切れ味や角度の違いもおろそかにはできない。
ステンレスの丸抜き、絞り、柄の取り付け、仕上げ研磨。
ただ工程をこなすだけではなく、
「気持ちよく使ってもらえるか」
「厨房の人にとってストレスにならないか」
そんな想像をしながら手を動かす。

