「この一手で、仕上がる気がした」
作業はほぼ終わっていた。 寸法も合っているし、見た目も悪くない。 でもどこか、まとまりきっていない感じがあった。 仕上げのつもりで、もう一度、角を軽くなでるように削ってみた。 あるいは、最後のネジをほんの少し締め直してみ …
作業はほぼ終わっていた。 寸法も合っているし、見た目も悪くない。 でもどこか、まとまりきっていない感じがあった。 仕上げのつもりで、もう一度、角を軽くなでるように削ってみた。 あるいは、最後のネジをほんの少し締め直してみ …
工場に響く音は、日によって違う。 でも今日はなんだか、どれも気持ちがいい。 プレス機がリズムよく上下する「ガチャン、ガチャン」。 ヤスリが金属を滑る「シュシュシュッ」という音も、 耳にスッと馴染んでくる。 集中していると …
ガチャガチャと音のする工程や、大きな機械の前での作業も悪くないけど、 実は密かに好きな作業がある。 それは、小さなバリを取るときだったり、 一個一個をトレイに並べていくときだったり。 単調で、地味で、誰も注目しないような …
月曜の朝、工場に入ってスイッチを入れる。 ラジオがついて、照明が点く。 コーヒーを一口。 軍手をはめて、作業台へ。 そこで気づく。 頭で考えてないのに、手がもう次の動きを知っている。 先週と同じ工具を手に取り、 同じ順番 …
作業を終えたあと、ふと目についた廃材箱。 いつの間にかパンパンに詰まっていて、横に置いたままになっていた。 忙しい平日は見て見ぬふりをしていたけど、 今日は日曜日。少しだけ時間がある。 空の段ボールにまとめ直して、スペー …
今日は、仕上がりがとにかくよかった。 バリもなく、光沢も揃い、手に取ったときのバランスも申し分ない。 でも、ただ「よかった」で終わらせたくない。 なぜ上手くいったのか。どこで判断して、どこを微調整したのか。 作業の手順、 …
気温が上がって、少し身体が重く感じる午後。作業の流れも落ち着いて、あとは仕上げ…というときに、ふと「何か足りない」と思う瞬間がある。 見た目も寸法も合っている。けれど、どうも“しっくり”こない。そんなときこそ、職人の感覚 …
作業が始まる前、図面に目を通しながらも、最終的に頼りにするのはやっぱり“手の感覚”。 今日もひとつ、仕上がったばかりの取っ手を親指でなぞってみた。段差、ザラつき、わずかな歪み……目では見えない“違和感”が、指先にはちゃん …
工場の片隅にある、年季の入ったドライバー。新品のようにピカピカでもなければ、見た目に目立つ存在でもないけれど──気づけば今日も、それを手に取っていた。 なんとなく手に馴染む感触。少し曲がった柄も、自分の握り方にぴったりで …
いつも通り、寸法を測る。 同じ手順、同じ道具。けれど今日、「あれ?」と違和感が残った。 定規は合ってる。ノギスも狂っていない。それでも、どこかが腑に落ちない。 そんな瞬間に、職人の感覚は育つ。 慣れは味方にもなるけれど、 …